「讃歌」 篠田節子 B

嫌味なくらいの現実を小説のなかに持ち込みながら、ものすごく物語の起承転結をくくるひと、というイメージのひと。
ただ、「音楽の持つ奇跡」を書かれるときだけ、ロマンティック過ぎて、なあ。
と思っていたのですが、この作品はちょっと意外でした。

あるビオラ奏者が物語の主題。かつて天才少女と呼ばれた彼女は、受賞・留学などの経験を経ながらも、大きく挫折も味わっていた。彼女の音に耳を止め、作成されたテレビ特番は大好評となり、彼女自身の人気も急上昇する。作成したテレビマンも大きく評価を受けるが、その後・・

「音楽の持つ力って何?」ってことと、「本当と嘘ってどう違う?」ってことと、どっちか一つだけだったらもっと底が浅いんだろうけど・・怖かったです。
あと、フジ子・ヘミングのことを思い出させられて、それも怖かったです。

ホラーでないのに、怖い小説。