「半身」 サラ・ウォーターズ A-



ちょうど話題になっていたころ、文庫だしと思って購入して、そのまま随分ほうっておいた作品。導入部がくらーくおもーく、そして見事に女の人ばっかりが出てくるので、なんだか興味を惹かれなかったのです。
ここしばらく活字モードだったので、手にとって読み進めてみたらものすごく面白かった。けど、ものすごく百合だった。お好きな人は嬉しい切ない・恋加減なのかもしれないけどー。

主人公は、”いきおくれ”た、レディ。暗い気持ちを晴らすために、慰問で牢獄を訪れるところから物語がスタート。その陰鬱な場所で、彼女は出会う。ある「霊能力者」に。

二人の主要人物の日記で物語が動くので、その動きに慣れるまではややまだるっこしいです。あと、根底に悲しい諦めのどろどろした感情があるのと……最後の読後感がー。良くないんだけどー。
以下ネタバレ伏字感想。この話をミステリとして読む場合は、「シライナ・ドーズは結局、霊能力者なのか?瞬間移動はありえるのか?そうでないなら、どうやって物品は動いたのか?」の部分。シライナの日記で、真相をほのめかしつつ、オレンジや髪の毛で読者をも信じ込ませる手法は(私が単純なせいなのか)その両方があったが故にうまいなあと思いました。あと、「女中が犯人(?)」っていうのは、軽く探偵小説の十戒に反しているっぽくて楽しかったです。
しかし。最後がハッピーエンドだといいのになー、と、マーガレットの不幸にやや感情移入しながら読んでいただけに。やっぱりかわいそうだなと思ってしまう。最後の、ため息のような、あきらめの塊のようなコーダの部分、絶望に浸った感情を読まされるのは……。

でも面白いのです。面白かったです。