「おかしな二人」 井上夢人 A+

で、岡嶋二人の内側を井上さん側から描いた作品が読みたくなって、書店をうろうろ。新刊文庫でかってしまいました。結構なボリュームなのに、一気読みしましたよ。

「井上さんの側からだけ」だし、その内情の書き方にマイナスな読後感をもたれるひともいるみたいだけど……私はこの作品、かなり好きだなあと思います。自分が自分勝手である、飽きっぽい、わがままである、ということを再三確認したうえでの「もう無理だよ」という最終通告のあたりは、ぜんぜん勝手だなあとは思わなかった。人間ってひとりひとりが勝手なのが当然だよなという感じで、いやじゃないのだ。

原稿用紙の使い方すらぴんとこない人が「賞」をめざし「作家」になり、書き続けるまでっていうドキュメントとしても面白いー。人の成長と成長しない加減と、時代のうつりかわりも面白い。岡嶋二人のメイン作品をちゃんと読んでいたこともプラスして、私はこの作品はすごく好きだなあ、と思います。

井上さんの「印象から小説をかく」雰囲気が嫌いでないこともありますね、きっと。恩田陸さんもその系譜のひとだと思いますねー。