「丹生都比売」 梨木香歩 B


におつひめ。
梨木さんを紹介されてほれこんだ「西の魔女が死んだ」の頃から、この小説だけは縁がなく読むことが出来ずにいました。ようやく読めました。
舞台は、ちょうど壬申の乱のころ。が、吉野にその身を伏せていた時。物語は、草壁皇子大海人皇子と、のちの持統天皇の息子)の視点で物語は進みます。

「社会」と名のつくものになかなか興味をもてない自分が、なぜか一番よく知っている時代の一つ。というのはこの時代、創作題材になることが多いからだと思います。日本の歴史そのものでも、うののさららのひめみこ、の劇的なキャラクターは非常に印象深かったし。「天上の虹」とか、「宇宙皇子」とかでも。
そんなこんなで、彼らの力関係や、結局歴史はどう動いたか、を知っているだけに、飽きてしまうかなあと思ったりしながら読んだのですが。このひとの文章は本当に自分に美しく響く。ということを再確認しました。
草壁皇子の目を通して、「おとうさま」「おかあさま」「きょうだい」を見る、感情が自分の五感にいろんな影響を与えている感じがする、音や色や陰や幻想が、視覚的に立ち上る。

この時代が好きなひとには、ぜひ読んでみていただきたい小品。