東京少年」 長野まゆみ C+

書き下ろし小説。
世に流通していない、「黒い椿」を真ん中に、主人公の少年・常緑と、その父・叔父・父の友人・友人の弟・父の縁で兄貴分、が四角六角入り混じるお話。ただしくボーイズラブ系統な気が……文章の間合いがうまく呑み込めず、嫌いじゃない間合いなんだけど、これは映像か画にしてしまったほうが良い世界のような気がしました。関係の根幹にある絆は、割と早いうちに見えるんだけど……これで「母親」にもーっと魅力を感じられたら、もしかしたら好きな作品だったのかもしれない。
長野さんの描く女性で、好きになれたのは「箪笥のなか」の主人公だけかも。「母親」は、いつもノイズに近い存在のように思います。「天体議会」でも「レプリカキット」でも「テレビジョン・シティ」でも。そして、「父親」は、猫のように気まぐれで、それでも神様みたいな感じなの。