「月夜の晩に火事がいて」 芦原すなお D-


読むのに苦労した……。
中年の探偵の主人公が、生まれ故郷の幼馴染に「事件になりそうだから」と呼び戻される。そのきっかけは、その土地の童謡が手紙として地元の名士の家に届いたから。そしてそのわらべ歌の通りに事件が起こっていく……というもの。

なぜか、井上ひさしを思い出した。土着の雰囲気、不思議な言葉遣いをする変わった女の人、ふざけているのかなんだかわからない、真剣になりきらない全体の風景。でもこの風景に憧憬も郷愁もいだかない人間は「オチのつかないどたばた喜劇を外側から見せられている」気分になったのでした。