「二人道成寺」 近藤史恵 B-


うん。ネットでみかけた書評と同じことを思った。
小説として悪いんじゃなく、このシリーズとして出すのはどうか、ということなんだ。ミステリとしては、見える部分が多すぎる。それは悪いことじゃない。でも、この叢書にあってない、ということはあるはず。


そして、ラストシーン。私も、最後の場面がどうしてあそこで終わってしまうのか。と思ってしまう。あの人の書く舞台表現、すごく好きなのに。意図したものでも、(その空白を想像力に委ねられても、)手を抜いた、とひとことで言いあらわした書評は私の気持ちととても似ている。


このひとにとってこのシリーズは、加納さんの駒子に相応する大切なシリーズなんじゃないだろーか。と、文章の肌ざわりに思った。私は駒子がダメなんだが、それでも「スペース」を読んだとき、あ、きっとすごく愛しい、という気持ちがあって、愛しいと思いながら書いてるんじゃないかな、という妄想がおそってきた。丁寧に。おんなじ一文字でも、ほかの手を抜いてる、ってことじゃなく、ただそれだけこの作品は大切にしてるんじゃないかな、という幻想。
その時に感じたのと近い手触りがある。そして私は近藤さんのこのシリーズ、ほんとに好きなんだよね。好きというより、いとしい。いとしいと思える世界があるのは幸せだなあと思う。