「昭和歌謡大全集」 村上龍 B-


「わーすれられないのー」
の一場面が見たくて見に行った映画の原作。この主役に松田龍平は正解だよなあ、と思った。あのおっちゃんが原田氏なのも、めちゃめちゃ正解だ。その二点だけであの(わけのわからない)映画は正しいのかもしれない……と思ってしまった。

けしてこの本は好きでは無いし、もともと村上氏の文章ってよくわからない。格好良いのか格好悪いのか判断のつかない、とりあえず私は着ないからわからないのかなあ、と思いつつ他人事としてみている服装のようなのだ。私が赤いと思っているものを黄色いと思っていそうな感じがする。好悪を越えて、わかんない。でも、この表現は下品だよなー、とか、この場面は笑える、とかの感情はあるんだけれども……。不思議です。


映画を見た後、ぱらぱらとめくったときは「全然違う?」というイメージでしたが、すべて読了してみたら、思いのほか忠実な再現がなされているんだな、と思いました。オバさんにたいする悪意がふつふつとしていて、少年たちの行き場のなさ感が暴走していて、非常に切なく楽しい?一冊です。映画がなければ読まなかっただろうけれど。


映画はー、「わーすれられないのー」と、「トカレフありますか?」「あるよ」と、古田新太氏の錆びたナイフ。この三点だけはもっかい見たいなー。と読みながら思い出していました。