「ロンド」上下巻 柄澤齋 C-

文庫版だったので上下巻。上巻読んでいるあたりは結構楽しかったんだけどなあ・・まさに「失速」した感じを受けてしまったのですあうあう。
でも、最後まで読むぞー、という喜びはありました。

まったく前知識なく手にとったミステリ。「ロンド」と題された、所在不明の絵画が物語の真ん中にあります。その年の美術の賞を受けながら、画家本人は受賞を望まなかった、”死”を描いた作品。主人公は、その作品に魅入られていて、その作家に魅入られている学芸員です。
「ロンド」は、画家の不慮の死とともに行方が不明となり、焼失したとすら思われていたけれども、というお話。

絵画を真ん中にすえたお話は結構すき。連想するのは飛鳥部勝則とかで、(このひとは「バラバの方へ」のあたりですっかり遠くなりましたが)やっぱり自分も「描く」人だった。ほとんど図示されないんだけれど、割と絵に迫れる感じがしたのはさすがだなと思う。

そして、前知識なかったんだけど、読みながら「虚無への供物」を思い出してました。その路線は、はずれではないみたいです。最初のあおりが、すごかったんだなー、とあとで知って思いました。
”かつて『虚無への供物』も『薔薇の名前』もその登場を同時代で迎えた人々がいたように、今、あなたは『ロンド』の登場を目の当たりにする……”
えーと、そこまでじゃないんだけど、このふたつの世界が好きなひとには、骨に響くみたいな部分があるのかなーと思います。私は、好きなんだけど、幻惑されないぐらいの立場にいる人間です。
で、「謎がミステリとしてもっと緻密なものなら、そのふたつに並び立つものになったかも」という感想をネットの海で見かけて、非常に納得しました。


あと、「虚無」→「失楽」に永らえる、退廃的な世界・うつくしく魔性な少年が好きなひとは、もっともっと楽しめるのかな〜、とかとか……魔性っぷりと逃避行の道行きに、個人的に鳥人ヒロミ(漫画家)の「成層圏の灯」を思い出しました。多分、救いの無い感じを受けたのでしょう。

以下ネタバレ感想。

とにかく、下巻にはいってすぐ、犯人さんが出てきたときは「ええええー??」と思いました。すっかり興奮状態で、ひたすら自分のことをしゃべりまくるのは、「絵」「創作」からの興奮、というとこ、わかるんだけど、わかるんだけどー・・とちょっと残念。まるで、がけっぷちの2時間ドラマの最後、みたいな風景を、真ん中で見てしまったのは痛かったなあ。
あと、マー公(という呼び方はいかがなものか)の雰囲気と魔性っぷりも、犯人さんの登場から突然!みたいで、なー・・・。

そしてラスト。あんまりひっかかっている感想をみかけなかったけど、ものすごく中途半端に「ネキ」に憑依してる感じ、気になりませんか。私はめちゃめちゃ気になりますけど。