「東京バンドワゴン」 小路幸也 A+

メフィスト賞受賞作を読んだだけだった方の作品。大変評判が良いので手にとってみましたが、これがとても面白かった!辛いくらい気持ちを明るくしてくれるタイプの物語。「東京バンドワゴン」というタイトルから想像していた内容とはまったく違いましたが。「東京バンドワゴン」は屋号である。というところまでは知っていたのですが、「ワゴンで商いするタイプの家族の話かな?」と思っていたのですね。違いました。歴史ある古書店でした。ちょっと複雑な家族構成の四世代の大家族が、仲良く暮らし、商いし、カフェなんかもやったりしていて、その店の主=そろそろ80になるおじいちゃんの奥さんが一人称。実は奥さんはもうなくなっていて、幽霊さんでふわふわとみんなを見守っているのです。
日常の謎」を解くタイプの、連作ミステリ。最後にある「かつてのホームドラマ」に捧げられているだけのことがあり、ものすごくドラマで見たい!と思いました。各2話ずつ使って、最後の大団円をプラス1話、全9話でNHKあたりでどうだろう。もてもてで困っちゃう添乗員の青くんとか、それを支えてて、唯一時々「おばあちゃんとお話できる」紺くんとか、多分ドラマ向きです。子供ネタも老人ネタもあるし。そして、つい内田裕也を想像しがちな「伝説のロッカー」我南人を誰がやるのか考えてるだけで、ぼんやり気晴らしになります。LOVEだねぇ。

とにかく、たいへんあったかくなりました。遠藤淑子さんのホームドラマものとか好きなひとは絶対おすすめです。