「ブラック・ダリア」 ジェイムズ・エルロイ B-

「世界一有名な死体」である「ブラック・ダリア」。その死体は腰の部分で半分に断ち切られて発見された。
ハリウッドで女優になることを夢見ながら、身を持ち崩した、娼婦まがいのことをして暮らしていた女性=エリザベス・ショート。彼女が殺された、実際の迷宮入りした事件。新聞記者たちは「常に黒いドレスに身をまとっていた」彼女に、「ブラック・ダリア」という愛称をつけた。

迷宮入りした殺人事件に独自の結論を加え、犯人を示しながら迷宮入りしたところまで小説にしたもの。作者は、「アメリカ文学界の狂犬」で「ノワール小説の第一人者」なのだそうで。
映画化の宣伝の影響で読んでみました。海外作品は基本的に手をつけないので、知識があまりないです。「ノワール小説」て言い方も初めて聞いた。現在いろんなパターンが流れている映画のCMも好きですが、文庫カバーにもなっている映画の中の「ブラック・ダリア」のポートレイトの印象が強くて、が一番強い動機。


で。内容としては。
濃かった。とにかく濃かった。文春文庫で570P程度の大作で、しかもみっちり中身が詰まっています。時間的な経過も、主人公の体験する諸々の事柄も。
主人公は警官で、パートナーと一緒に殺人事件を追うのかなあ、と想像してよみはじめたら、序盤はかなり出鼻をくじかれる感じ。
人が多すぎるし、アメリカの40年代の知識もないし、いろんな国に行ったり来たりする。多すぎる登場人物たちはみんな影を抱いてて好きになるのは難しい。
くるくるひっくりかえる人間関係の意味は、途中前に戻らないとつかめない。なんとかしがみついて、ラストシーンを理解しました。

最後までしがみついて読めたのは、作者さんの強い昏い、持続する衝動みたいなパワーを遠い平和な人間でも(だからこそ?)感じたから、のように思います。

とりあえず「暗黒のLA四部作」とされるものと、彼自身の実体験が元になる「我が母なる暗黒」は読んでみたいな、と思いました。


映画はー……2時間で収まるんかいね?(どうも収まっていないらしい)という気持ちが強い反面、CMに使われている音楽が好きなのと、やっぱり「ブラック・ダリア」があまりに綺麗なので、気になるなー。という感じ。