ジョゼと虎と魚たち』 A


もっと甘くて逃げ出したくなるようなのを想像していたら全然違って、思いのほか好きだった。
以下ネタバレ感想。




ものすごく誠実に描かれている気がした。ラストの感想が二分するのも、恒夫とジョゼのどちらに感情移入するかによっての二分で、良い悪いじゃないと思う。「こうなればよかった」と思う現実は多すぎて、だから創作物でぐらい、とも思うけれど、「こんなのないもん」という逆に悲しくなるような感じは無かったから。


『それもまたよし、や』
というジョゼの台詞にずがんと来た人も多かろう。それも好きだ。でも、私はそれ以前、そのずっと暗いところにいたジョゼが、明るい方にいる恒夫に惹かれて引っ張られて仕方なくて、でもずっと暗いところにいたから明るいのはいけないことで怖いことで。触れただけで逃げずにいられないジョゼの手を、簡単にとってにこにこと勝手に嬉しくなっている恒夫、というあの押し入れ間際のツーショットが一番痛かったなあ……。

恒夫が朝ご飯をはじめてたべておいしそうにしているところもものすごくずがんときた。だからこそ、ラストの魚を焼いている光のなかの場面がとても好き。

冒頭の写真の、ジョゼの横顔でつかまれたね。あの場面を見て、この映画見に来てよかったかも、と思ったから。



ラストシーンよりも、そこにいたるジョゼの変化、中盤の流れに一番泣かされました。いい映画だ。悲しいけどさ。もっと年とってから、もういちど見よう。


池脇千鶴は無条件にすきなんだけど、妻夫木聡IWGP以来はじめて「ああ格好よいんだねこのひと」そして「ちゃんと役者さんなんだー」と認識しました。映画のウォーターボーイズは可愛い、のほうが強かったから演技がどうとか見てなかったし、主演ドラマ見てなかったからね。『69』もちょっと楽しみかも。


あと不思議だったのは、赤目四十八瀧ではあんなにしっくりきてた新井浩文が、この映画では逆に浮いていた。何故だ?役のせい?そして見るたびに成長・変化していて次はどうなっているかが楽しみで怖い。あと、最初の雀卓囲んでる面子がすごく好きだ。