赤目四十八瀧心中未遂』 車谷長吉 B


映画を先にみて、原作に戻る。
すべてが腑に落ちた。と、思った。
映画は、ものすごくよく再現してるんだけど、でもでも。
ネタバレ感想としていうと、(本と映画両方の)



主人公の位置づけがまったく違うからだ。
映画の主人公は、全然「くいつめ」て見えなかった。
古代の少年のミイラじゃなくて、古代の少年が現代に居る、だった。
アヤちゃんにおいてかれたあと、まだどこへでも行けそうだった。
東京から迎えに来たひとは、まだ彼に未来を見ていた。


小説の主人公は、物語の最初ですでに止まっている。
くいつめもの、の言葉の意味がそのままただしく、
古代の少年が、ミイラになってただよっている。

それでも。くいつめても、アヤちゃんや、姐さんには、比べようがない、存在。
だから心中しようが、無い。
そういうお話だったんだ。すべて腑に落ちた。



なんであんなに若くていきのよいおにーさんを配役したんだろうなあ。
ほかの配役はすべて完璧だった。少年も含めて。


それにしても。残酷で、すざまじい話だった。なんというか、久々に純文学の系譜のなかの……みたいな。なぜか思い出したのは壇一雄
この作者さんの、中身を想像すると怖いな。